1973年の晩夏、私は自分の屋根裏部屋に金髪の少女たちと黒髪の少年たちを匿っていた。
ベルサイユのばらを全巻買いなおすのは、実に3回めです。最初は前にも書いたとおり、盲腸入院中に母が買ってくれて、私は10歳の冬ですから最初は全く内容わからず。しかし、母は読んだ瞬間から大変に気に入ったらしく、その時点で売っていた7巻までの単行本をすぐに全部買ってきたくれた。盲腸入院から帰ってくる頃には、当然のように私もハマり、週刊マーガレットを毎週買うようになっていたように思う。
母、当時40代少し前。少女時代に7歳下の妹の少女クラブを奪い取るようにして「リボンの騎士」を読んでいたというツワモノ。
ところで私には一つ違いの弟がいて当時同室で暮らしていた。ベルばらは男の子にはたいへんに難しいマンガなんですが、そこは10歳の子どもの柔軟性で3ヶ月ほどで彼も熱狂的なファンに。彼は回想シーンの8歳~10歳くらいのオスカルが可愛くて好きと言っていたなぁ。大人のオスカルはまあとても手が出そうにない存在だから当然ですが。子ども部屋の1つのベットの上で全巻並べて二人で寝転がって読んでいました。
そこで問題になるのは8巻です。オスカルとアンドレが結ばれるページです。当時、思春期突入前でしたが、母は先手を打ち、まず父母の寝室を客間に移すと宣言し、その部屋を私の部屋にすると言ってきたのでした。
新しい部屋は屋根裏に出られる扉のついた北側の部屋で東の高い位置に小さな窓があり、私は自分の部屋を持てることは嬉しかったのでそこへ移りました。結局、部屋が手狭になったこともあり2年後には家の建て直しをしてしまったのでその部屋に住んでいたのはわずかな期間なのですが、今でも高い塔のてっぺんにあるようなのあの屋根裏部屋のイメージを幻想的に思い出します。
それから、母は部屋を移した後、突然、ベルばら全9巻を隠してしまったのです!
もちろん表向きはマンガに熱中してお手伝いしないとか勉強しないとか、そんなことを言っていましたが、もちろんそんな嘘、子どもにだってわかります。私は読書好きで成績に関しては要領のいい方でしたしね。どんなに泣いても、勉強もお手伝いもするからとひざまずいて懇願を繰り返しても返してくれなかったんだよーーー!!。
(ずっと後、成人してからあの時の訳を聞いたら、やっぱり問題は8巻でそこだけ隠すと返ってまずいから全巻隠したなどと言っていました。うーー。)
さて、それからがたいへんです。11歳の私は自力で買いなおさねばと決心しました。どうしてももう一度オスカルやアンドレやロザリーや黒い騎士に、悲壮な女王アントワネットに出会わなければなりません。困ったことに、当時私の小遣いは申告制で欲しいものがある時に申告してその分のお金をもらうという形でした。しかし、母には言えません。
この時、スヌーピーの英語の漫画が家にたくさんあったので、貸し漫画屋もどきをすることにしました。自転車で女友達の家を回り、漫画を届けるふりをして2冊あるから1冊買いとてとか言って地道に秘密のお金を貯めた。でもって1冊、また1冊と買いなおしていったのです。この時は苦しかったな。確かマーガレットコミックスは1冊320円だったと思うんですがたいへんだった。
それから手に入れた後の隠し場所にも苦労しました。屋根裏がついた部屋だったのでそこに隠すことは当然思いついたけど、何かの機会に見つかってしまうかもしれない。部屋を慎重に調べた結果、天井の片隅の板が一枚だけ持ち上げることができ、そこに空間があることを発見。そこに外れないカバーをつけて慎重に隠し、読む時は蝋燭や懐中電灯を持ち込んで屋根裏部屋で読む。隠されたがゆえに、妄想はさらに豊かなイマジネーションとなり、ありとあらゆる物語のヴァリエーションを紡いでいた。親に見せられない絵を描く楽しみもこの頃覚えた。今は無いあの部屋のイメージを思い浮かべるだけで、当時、拡げた想像の翼が蘇ってくるような気がする。
禁断の書だったゆえに、より深く思い入れてしまったことをよく覚えています。しかし、私の母はとんでもない人だった。オスカルさまが血を吐くシーンで「これは肺結核。当時の医学では絶対に助からない」などと断言してくれて、え~~~!!!と少女の私を驚愕させてくれたり、「アンドレのタイプは、そうは思えなくても結果的に女を不幸にする。選ぶならベルナールにしなさい」とか。ママン!それは自分の豊かな恋愛経験からの意見なの!?って・・・。
今ならなんかわかりますよ?確かに中年期のオスカルさまはアル中で肺病病みだ。アンドレの犠牲的愛情は彼女を結果的に死へ追い込んでいくところがある。完全版を今読むと、黒い騎士の登場がこの物語のターニングポイントであることがよくわかります。アンドレの「武官はどんな時でも感情で行動するものじゃない」(このセリフはアンドレ死後もアランに投影されてオスカルを縛るすごいセリフである)とベルナールの「王室の飾り人形!」が、彼女を戻ることのできない「武官」にしちゃったんだよなぁ。ま、もともと、お父様のジャルジェ将軍が悪いんだけどさ~。それでも結婚させようとした時期がもっと早ければ別の道があった。後に出たル・ルーの登場するジャルジェ将軍の息子現るの外伝が黒い騎士を捕まえる寸前時期なのもよくわかる。
アンドレとベルナール(黒い騎士)はダブルキャストですよねぇ。実はオスカルとロザリーも女性の中の少年性と少女性を分け合っている。さらにアランと妹のディアンヌもトリプルキャスト?この漫画は、少女にとって二重に三重に恋のできる素晴らしくお得な恋愛漫画なんだけど、男性にはまず絶対に生理的に理解できない漫画なんだよね。
「栄光のナポレオン」でベルナールが「アランは一生分の片思いをしてしまったから、もう恋愛はできない」というのに対して、ロザリーは1児の母になっているのに、「ダメ、オスカルさまはわたしのものよ」と言って、ベルナールに「ロザリー、おまえねー」と言われているのに笑った。そうよ、さすがは全国の少女代表、春風ロザリー、「片思い」なら絶対アランなんかに負けないよね~。アランにはアンドレの死後1パーセントの片思い成就の可能性があるかもしれないけどさ、ロザリーの可能性は限りなく0なんだから~。
『少女にとっては「片思い」こそが永遠の「恋」である。』
途中です。後でもう一度書きなおします。
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